国産ピアノの未来


いらなくなったモノの再利用。。
最近はリサイクル品の大型店なども増えてきました。
ピアノも例外ではありません。
昔から、中古ピアノ店は存在しますが、最近では中古ピアノを海外に送る
「運動」も盛んになってきました。
なんだかんだ言っても日本製は世界的に安価で質が高く、故障しにくいので、
海外では評価が高いのです。
大手メーカーも中古修理部門をもうけたり、小規模メーカーは
独自の特注修理を行ったり(赤・青等・原色塗装〜彫刻・象眼模様)
様々なアイディアで生き残りをかけています。

中古として販売されるピアノ・・・・
ここには一つ大きな問題があります。
クオリティと価格に基準がなく、保証する機関もない事です。
販売運営者の決定権で独自な状態で販売される訳です。
キチンと清掃・整備・調整・修理されて販売されるピアノもあれば
引き取ったまま、外装磨きだけで販売され、調整はおろか
掃除もしていないピアノを販売している店もあります。

同じ30万の同モデルでも、全く別なピアノです。
もちろん、手をかける程、時間・料金もかかり価格に影響を及ぼします。
しかし市場では売れる値段が先に決まっている為、修理代をかけれない現実があります


例えばヤマハU-1Hという普及型モデル。(市場価格20〜25万)
引き取った保存状態が悪いとして、売り物のレベルに仕上げるのに
全塗装・全弦張り替え・ハンマー交換の修理が必要とします。
残念ながらそれだけで、40万の経費がかかり、このピアノは再販不可となってしまいます。
この現実に対して、いかに市場に貢献するか・・・・
廃棄にするか?安かろう悪かろうでの再販か?寄贈か?(迷惑)

その一方、これが高級欧州ピアノであれば、話は変わってきます。
市場価格が高いので充分モトが取れる販売が可能です。
かと言ってそんなに売れるモノでもありません

普及型(ヤマハ他)であれ、高級型(スタインウェイ他)であれ、
しっかり修理するのであれば、コスト的に大きく変わりません。
やはり保存状態がいいピアノは業界にとってもありがたいものです。

そして、育ちがよく、調整の行き届いているピアノは素晴らしい音がします。
大手国産2社の40〜30年前のUPピアノ・・・
素材が基本に忠実で、プラスチックも少なく、響板に補助板があり、
柔らかいハンマーで、充分音にエネルギーがあります。

我々、現場の調律師は100年の歴史ある日本のピアノ文化を
次の世代に「正しく」伝えないといけません。

強制ではなく、・・ピアノを家族・・財産と感じて頂ける
そういう自然なかかわりを推奨していけば、中古も新品も
同じ価値観で販売でき、大事ににしてもらえます。

しかし、またここが難しいんだなぁ・・・^^;

普及タイプの中古ピアノを例にあげると
なぜか、ヤマハやカワイ以外の国産ピアノは2流品の様に言われ
買い取りも拒否される事があります。いい保存状態でもです。

原因の一つは性能品質が良くても名前が知れてないと、販売しにくい・・・
というデメリットです。
実は日本には多い時期37社もピアノ会社があり、倒産・廃業・合併の中で
今は5社になりました。(ヤマハ・カワイ・東洋ピアノ・クロイツェル・シュベスター)
いいピアノを造っても倒産していくのがこの業界・・・・
SW・ベヒ・ベーゼンも何度も資本家が変わっています。

ヤマハやカワイはアジア諸国を販売ターゲットに生産諸点を中国・他に移しています。
日本の人件費で造っていては発展途上国では高すぎるのです。
こうした流れは今後どんどん加速していく事でしょう。

日本製ピアノは世界的にみても、工業的に良質で安価ですが反面、
「造り」に伝統と主張を感じない....
(大正期ヤマハを除く)
現存するピアノ、新しく生産されるピアノがどんな価値観で生存していくか?
鍵を握るのは、やはり消費者と我々なのです。


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