ピアノ調整・修理

一般的に調律師の行う作業を、なんでも調律といいますが、実際にそれはピアノを良好にする手段の3割にもなりません。
他に重要な「整調」と「整音」があり、「調律」と会わせ大きく3つの手段があります。

それらを「工房等」では、じっくり細かく、精密に作業・研究できますが、
「市場・現場」での調整や修理交換についてはどうしても「制限」があります。

作業の取り組みとして
* ピアノに触れ、演奏者の立場から、体感したものを優先的に技術に変換 *
しています。

このピアノはどうしてほしいのか?
弾きながら、問いかけ、始まります。


*調律

現代一般的に行う調律は平均律です。もちろん指定すれば古典調律も可能です。
ではどうやって平均律を造るのかというと、A49を音叉440等で会わせ、そこを基準に88の鍵盤に広げ、合わせていきます。
これは音程を覚えて広げているのではなく、4度、5度、長3度、他の「うなり」を覚えていて
頭の中にある感覚と照合し、かつ平均律の比になるように修正しながら進めていきます。
これはあくまで数学的でないといけません。

また3本弦/中音〜高音のユニゾンはピッタリ合わせると音が硬くなり?振動減衰が早いので
3本弦のうち、1本をわずかに狂わし、振動を伸ばそうとする理論があります。
しかし、そのテクニックはやり過ぎると音楽をじゃまする事になります。
ユニゾンで音色を造る事は本質ではありませんので
私は3本弦の振動が自然に解消する位置に合わせます。

またピアノは鋼鉄の弦を1本あたり平均80kの強い張力で張っています。
これにより音の終わりの音程が上昇する傾向があり、これをインハーモニーシティといいます。
なぜ、このような現象が起こるのかというと、弦の屈折箇所2点に近い部分が弦中心部より早く振動減衰するからです。
この現象をうまく利用し音を重ねて行く事で、そのピアノの設計にあった美しいオクターフ曲線゙ができあがります。

また調律は合わせた位置から狂いにくい止め方をしなければなりません。
しかしどんなに確実に音程をとり、チューニングピンをとめても、早く狂ってしまう事があります
その最も多い原因は「乾燥」と「温度変化」です。
特に中音始まり箇所は張力が低い事もあり、温度差の影響を受けやすいです
調律した時より温度が上がれば、その部分の音程は下がり
温度が下がればその逆です。
乾燥は特にピン板の水分に影響があり、チューニングピンのトルクが低下し、緩み、音程が下がります。

調律時の温度は演奏時と同じであるべきで、とても大事です


*整調

整調とは鍵盤を押さえ下に付くまでの、音が出るメカニックのシステムを調整する作業で、ダンパーの作動も含みます。
ピアニストの奏でる、フォルテやピアニシモ、高速トリル・・
あらゆるタッチに対してピアノが答えてくれなければ演奏はできません。
現代のピアニストはピアノの構造を使って音楽のあらゆる可能性を引きだします
一つの音に対して、6つの関節があり、すべて適切な抵抗が必要であり
その運動量は約束された寸法に均一に合わせておかないといけません。
またピアノの趣向やピアニストの好みでわずかに寸法を変える事があります。
しかしこれには限界がありますので、あくまで正常動作の約束の範囲です
どんなピアノのアクションにも対応する為に、
物理的にメカニックを知っておかないといけません。
また整調はハンマーの加速度に関係するので、音量、音質の変化に影響力をもっています。

グランドピアノ整調(例)
全体整調見直し、大きくずれている寸法や、ガタ、スティック、ネジしまり修正
清掃
棚板オサ合わせ
鍵盤調整
ジャック前後高さ調整
レットオフ調整
ドロップ調整
ハンマーストローク調整
バックストップ調整
スプリング調整
ダンパー関係
ペダル関係
全体見直し

*整音

ピアノの音質に最も影響力があるのが整音です。
ハンマーフェルトの硬度、弾力を調整し、音質を創造するこの作業は
日本では「整音」というのが一般的ですが、使用する文字をあえて私は「声音」と言いたいと思います。

ピアノはハンマーの状態が悪いと、様々な汚い音を出します
バチャ-!ギャン-!バン-!
ただ音色を整えるというなら「これら」の音で整えても言い訳です。

音楽に使用する音色は決してそうではありません。
では、どういう音色であるべきか?
ここに深く学ぶべき音楽的要素があります。

物語・言葉・情景
この3つをピアノで表現する為の、究極イメージはオーケストラです。

低音はコントラバス
中音は人間の声
高音はホルン・トランペット
最高音はピッコロ

そして母音は「オー」です。
のどを開け、腹から声を出す声楽的な音色。
低音は「ボーン」
中音は「ポーン」
高音は「コーン」
「整音」は「声音」であるべき。

では具体的にどういう作業をするのかと言いますと
ハンマーのフェルトに針を刺します。
使用する針の太さ、早さ、刺す場所、抵抗感から
フェルト変化を感じ取り、感覚から音色を求めて行きます

作業はfの打鍵でワレない音色を造り
ppのタッチで粒を揃えていきます。

↑ハンマーの状態で違いますが、pp〜ffまで針を刺す位置を色分けした図です。


以下、C5の整音サンプル音です。
同じタッチで弾いています。
音質の違いをご参考下さい。
*Aの音を聞きやすい音量で聞くと、@の音はおとなしく、弱く感じてしまいますので
Aの音量をうるさめに上げて聞くと、差がわかりやすいと思います


@整音後のマロヤカな音


音と音とのつながりがレガートに感じます
音が膨らんでピークにいきますので、
自然とピークでつながる弾き方になります。

A整音前の硬い音

耳に付く衝撃的な音です。
音が出た瞬間がピーク
音と音が分離してしまいます
この音だと、耳が痛いので自然と弱く弾いてしまい、充分なタッチで弾けません

音色の変化でタッチも変わって感じる関係はこうした要素があります


↓ピッカーという専用道具を使用します。


*修理・交換

ピアノの修理・交換については、そのピアノの価値を損なわす、
値段・品質、そのピアノに合わせた最適な方法を考え、実践しています

またすべてのピアノに純正部品が適している訳ではありません
純正を使用した為にバランスを崩した例はたくさんあります。
そのピアノに合う、目的にあうパーツを選択しています
特にハンマー・弦などは純正よりすぐれたパーツを使用する事により
ピアノの潜在能力が上がり値段も抑える事ができます。

修理・交換は料金と仕上がりを考え、
経験から適切な方法を選び実践しています。
かと言って押し売りは致しません。
また症状により様子を見る場合もあります。

基本的には可能な部品はそのまま使用し
値段を抑え、安心して使用できる仕上がりを目指します



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